北欧に造詣の深い、ジャーナリストの萩原健太郎さんをお招きして、北欧デザインやライフスタイルについてうかがいます。毎月1回、第4金曜日の更新です。
萩原健太郎のDESIGN FROM SCANDINAVIA
第四回
北欧とコーヒー
“北欧とコーヒー”と聞いて、今でこそ、「北欧ではコーヒーがよく飲まれる」こととか、「北欧のコーヒーは、浅煎りで酸味があってフルーティー」といったことが知られるようになりました。
でも、僕が2015年に著書『北欧とコーヒー』を出版したときは、ほとんど知られていませんでした。
当時、北欧のカフェやスイーツを紹介する本はたくさんあったのですが、「北欧の人々にとって、コーヒーの存在とは?」というテーマは新鮮だったのでしょう。
正直、ベストセラーとは程遠かったのですが(笑)、読者のレビューを拝見すると、読んでいただいた方には響いたのかな、と思っています。
『北欧とコーヒー』(2015年/青幻舎)
「スナフキンが、パイプでさしたほうを見ると、豆をいっぱいいれたなべが、キャンプのたき火の上で、ぐつぐつにえています。すぐそばには、あついコーヒーもありました」
「もしも島が流れだして、ある朝思いもかけず、ムーミン谷のあの桟橋のところにたどりついたとしたら、どうかしら。それともまた、沖へ沖へと流されて、何年も何年も漂流したあげく、すべりやすいおぼんの上のコーヒー茶わんみたいに、世界のはしからころげおちたらどうしましょう……」
いずれも、『ムーミン童話』の一節です。
このように、文章やイラストレーションのなかに、コーヒーはよく登場します。
また、日本でも人気のフィンランドの映画監督、アキ・カウリスマキの映画『愛しのタチアナ』では、コーヒー中毒の男が主人公です。
これらのことから、北欧ではコーヒーがよく飲まれることが窺い知れます。
ちなみにフィンランドは、国民一人当たりのコーヒーの消費量が世界一といわれています。
映画『愛しのタチアナ』の一場面。途中、立ち寄ったカフェにて、片時もコーヒーサーバーを離さないヴァルド(右)
味については、ノルウェーとデンマークの評判が高いです。
ぜひ、現地で体感していただきたいところですが、コロナ禍でそうもいかないので、まずは代々木公園や浅草にあるノルウェー・オスロ発のカフェ「フグレン」を訪ねてみてください。
インテリアも素敵ですよ。
もし、お気に召したなら、コーヒー豆を買って帰って、自分で淹れてみてもいいかも。
お気に入りのカップに注いで……。そうそう、ファッツェルのお菓子も忘れずに。
代々木公園のそばにあるカフェ「フグレン」。写真は『北欧とコーヒー』P.14-15より
萩原 健太郎
萩原 健太郎
http://www.flighttodenmark.com
ジャーナリスト。日本文藝家協会会員。1972年生まれ。大阪府出身。関西学院大学卒業。株式会社アクタス勤務、デンマーク留学などを経て2007年独立。デザイン、インテリア、北欧、手仕事などのジャンルの執筆および講演、百貨店などの企画のプロデュースを中心に活動中。著書に『北欧の絶景を旅する アイスランド』『フィンランドを知るためのキーワード A to Z』(ネコ・パブリッシング)、『北欧とコーヒー』(青幻舎)、『にっぽんの美しい民藝』『北欧の日用品』(エクスナレッジ)、『北欧デザインの巨人たち あしあとをたどって。』(ビー・エヌ・エヌ新社)、『ストーリーのある50の名作椅子案内』『ストーリーのある50の名作照明案内』(スペースシャワーネットワーク)などがある。
店長カトーより
いつも北欧出張でデンマークの空港に着くと、まずはなにはともあれスタンドでホットコーヒーを飲みます。日本で飲みなれたコーヒーと違う、浅炒りで爽やかな風味に「ああ、デンマークに来たなあ」と実感します。味と場所がセットで記憶されているようで、日本にいても浅煎りのコーヒーを飲む度にちょっと北欧の記憶がよみがえります。カップ1杯の旅ですね。