萩原健太郎のDESIGN FROM SCANDINAVIA

北欧に造詣の深い、ジャーナリストの萩原健太郎さんをお招きして、北欧デザインやライフスタイルについてうかがいます。毎月1回、第4金曜日の更新です。


第五回

北欧最古のテキスタイルブランド〜フィンレイソン


フィンランドのテキスタイルブランドといえば、何を思い浮かべるでしょうか?
フィンエアーなどの企業とのコラボレーションで目にする機会も多い「マリメッコ」や、若いクリエイターのアイデアとクラフトマンシップを融合させた「カウニステ」などが人気ですが、前者は戦後、後者にいたっては21世紀に入ってから誕生したブランドです。
今日、ご紹介したいのは、それらをはるかにしのぐ伝統を持つブランド「フィンレイソン」です。

 

フィンレイソンは1820年、スコットランド出身のジェームズ・フィンレイソンがタンペレにて小さな紡績工場を創業したのが始まりです。
北欧で最古のテキスタイルブランドであり、他の業界に目を向けてもフィンレイソンより長い歴史を有するのは、オレンジ色のハサミで知られるフィンランドの「フィスカルス」(1649年)や、ブルーフルーテッドなどの食器で有名なデンマークの「ロイヤル コペンハーゲン」(1775年)などしかありません。


タンペレのフィンレイソンの創業地。現在は複合施設に


タンペレにおいて、フィンレイソンは一企業としての存在を越えていました。
1850年代以降には、タンペレの人口の半分もの人々を雇い、フィンランドではじめて女性に雇用の場を提供し、市内のすべての店舗で使える独自の通貨「フィンレイソン通貨」を発行して給料を支払いました。
さらに、工場の敷地内には学校や図書館、教会などが建てられました。
それらは今日、文化施設やレストラン、ショップなどの複合施設として再活用されています。


フィンレイソン通貨(1855〜1861年)


もちろん、時代を積み重ねるなか、多くの名作も生み出しています。
特に、1951年に社内にデザインアトリエを設置して以来、今日までロングセラーを続ける幾何学模様の「コロナ」、レースのような花柄の「タイミ」、象をモチーフにした「エレファンティ」や、思案するパンダを描いた「アヤトス」など、多彩なパターンを世に送り出してきました。
また、フィンレイソンは作者のトーベ・ヤンソンからムーミンの図柄の生地を制作する許諾を得ている唯一の企業でもあります。


「エレファンティ」(1969年)。ライナ・コスケラのデザイン


「ムーミン」


2020年、創業から200年を迎えたフィンレイソンですが、本来ならば、昨年に展覧会を行う予定でした。
それがコロナの影響で実施できず、ようやく今月末からまずは新潟で「フィンレイソン展」が開催される運びとなりました。
フィンレイソンの過去から現在、そして未来への展望まで紐解く内容となっています。


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創業200周年記念 フィンレイソン展

会期 令和3年6月26日(土)~8月29日(日)
会場 新潟市新津美術館(〒956-0846 新潟市秋葉区蒲ヶ沢109番地1)
休館日 月曜日(祝日、7月26日、8月9日は開館)
開館時間 午前10時~午後5時(観覧券の販売は午後4時30分まで)
観覧料 当日券一般1,000円 大学・高校生800円 中学生以下無料
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萩原 健太郎


萩原 健太郎

http://www.flighttodenmark.com
ジャーナリスト。日本文藝家協会会員。1972年生まれ。大阪府出身。関西学院大学卒業。株式会社アクタス勤務、デンマーク留学などを経て2007年独立。デザイン、インテリア、北欧、手仕事などのジャンルの執筆および講演、百貨店などの企画のプロデュースを中心に活動中。著書に『北欧の絶景を旅する アイスランド』『フィンランドを知るためのキーワード A to Z』(ネコ・パブリッシング)、『北欧とコーヒー』(青幻舎)、『にっぽんの美しい民藝』『北欧の日用品』(エクスナレッジ)、『北欧デザインの巨人たち あしあとをたどって。』(ビー・エヌ・エヌ新社)、『ストーリーのある50の名作椅子案内』『ストーリーのある50の名作照明案内』(スペースシャワーネットワーク)などがある。


店長カトーより

 

1850年代といえば、日本では江戸時代末期ですね。その頃に日本から遠く7,500km離れたフィンランドではこんなに大規模な工場生産を展開していたことに本当に驚きます。「フィンレイソン展」では当時の貴重な資料も見られそうで楽しみです。