北欧に造詣の深い、ジャーナリストの萩原健太郎さんをお招きして、北欧デザインやライフスタイルについてうかがいます。毎月1回、第4金曜日の更新です。
萩原健太郎のDESIGN FROM SCANDINAVIA
第八回
世界でもっとも美しい船旅
8年前のちょうど今頃、僕は書籍の取材でノルウェーを旅していました。
取材といえば、デザインやインテリア、建築が中心で、いつも街中をせわしく移動していた僕にとって、北欧の自然の雄大さや、光の移ろいの機微に触れられる、穏やかな旅となりました。
移動の手段は船。クルーズの名前は、「フッティルーテン」。
“世界でもっとも美しい船旅”と謳われています。
街並みが世界遺産にも登録されているベルゲンから、北極圏へ向かう6泊7日の旅です。
世界遺産に登録されているベルゲンのブリッゲン地区
フッティルーテンについて少し説明します。
日本でたとえるなら、沖縄県から北海道まで。
約2400kmにもおよぶノルウェー西海岸はフィヨルドに分断され、移動が困難な地域です。
そこで人と物資を運ぶために、1891年、ノルウェー政府はトロンハイムとハンメルフェストを結ぶ「海の道」をつくることを決定し、1893年7月、蒸気船「ヴェステローレン号」がトロンハイムを出港しました。
これが、フッティルーテンの処女航海です。
現在は、南はベルゲン、北はキルケネスへとルートは延長され、沿岸に暮らす住民のライフラインとして、また観光船として航行を続けています。
旅の途中では、オーレスンやトロンハイム、ロフォーテン諸島、トロムソなどに寄港します。
それでは、写真とともに旅の様子を紹介します。
乗船した「トロルフィヨルド号」
サンデッキの様子
フィヨルドのあいだを縫うように進みます
早朝に通過した、あまりにもさりげない北極圏の目印
ブルーが印象に残ったロフォーテン諸島の港町、スタムスン
鳥を道案内に見立てて、トロムソの街を散歩
旅の終盤、思わぬギフトが舞い降りてきました。
デッキを吹き抜ける夜風は、もうずいぶん冷たかったけど、しばしのあいだ、光のダンスに見惚れていました。
夜の9時頃から現れ始めたオーロラ
萩原 健太郎
萩原 健太郎
http://www.flighttodenmark.com
ジャーナリスト。日本文藝家協会会員。1972年生まれ。大阪府出身。関西学院大学卒業。株式会社アクタス勤務、デンマーク留学などを経て2007年独立。デザイン、インテリア、北欧、手仕事などのジャンルの執筆および講演、百貨店などの企画のプロデュースを中心に活動中。著書に『北欧の絶景を旅する アイスランド』『フィンランドを知るためのキーワード A to Z』(ネコ・パブリッシング)、『北欧とコーヒー』(青幻舎)、『にっぽんの美しい民藝』『北欧の日用品』(エクスナレッジ)、『北欧デザインの巨人たち あしあとをたどって。』(ビー・エヌ・エヌ新社)、『ストーリーのある50の名作椅子案内』『ストーリーのある50の名作照明案内』(スペースシャワーネットワーク)などがある。