北欧に造詣の深い、ジャーナリストの萩原健太郎さんをお招きして、北欧デザインやライフスタイルについてうかがいます。毎月1回、第4金曜日の更新です。
萩原健太郎のDESIGN FROM SCANDINAVIA 第十回
第十回
目と舌で味わうフィンランドのクラフトビール「Kukko(クッコ)」
まず、その色鮮やかな缶に目を奪われました。
エリック・ブルーン(フィンランドを代表するグラフィックデザイナー)がデザインを手がけた、フィンランドの定番の炭酸飲料「JAFFA(ヤッファ)」をはじめて見たときと同じくらいの衝撃でした。
フィンランドといえば、家具やテキスタイルなどのインテリアで知られますが、パッケージにも秀逸なものがあるのです。
その缶は、フィンランド南西部の町、ライティラで生まれたライティラン社のクラフトビール「Kukko(クッコ)」。
Kukkoとはフィンランド語で「雄鶏」の意味で、缶にはそのシルエットが描かれています。
Kukkoのラインナップの一つの「PILS(ピルス)」は、オレンジと黒、そして縁取りの白という少ない色数、スタイリッシュで力強いロゴ、イラストのパッケージ。
飲み終わった後も飾っておきたくなるほどです。
「Kukko PILS(クッコ・ピルス)」。2001年にデビューした、ライティラン社の最初の缶ビール
それでは、飲んでみましょう。
いつもなら缶のまま飲んでしまうのですが、今日はビールの色まで楽しみたいと思いました。
選んだグラスは、フィンランドのイッタラ社の「アイノ・アアルト タンブラー」。
ゆっくりと注ぐと、オレンジブラウンときめ細かい泡のコントラストが美しく、口に含むとクリーミーさとコクが相まって、とてもおいしい。
ゴクゴクというより、味わって飲みたいと思わせる味でした。
一日頑張った自分へのご褒美に飲みたくなる、ビール好きの恋人や友人らにあげたくなる、そんなビールです。
アルヴァ・アアルトの妻、アイノ・アアルトのデザイン。1932年の発売から今日まで、時代を超えて愛され続ける名作
他にも、
ダークオレンジの缶は、ホップの多い、上面発酵のフルモルトビール「Kukko IPA」、
グリーンの缶は、ペールラガータイプのフルモルトビール「Kukko LAGER」、
ブルーの缶は、ろ過されたペールラガー「Kukko HELLES」、
などが揃います。
お好みや料理との組み合わせで、選んでみてはいかがでしょう。
「Kukko クッコ ビール 6本セット」もあります
最後に、ビールのあてになるようないい話を。
2001年、ライティラン社は、フィンランド国内ではじめて風力発電のみによる運用に切り替えました。
さらに、2018年からは自社の太陽エネルギー発電所で生成されたエネルギーを使用しています。
また、醸造に使った穀物は、動物用飼料として農家へ寄付しているそうです……。
まあ、あんまり長いと嫌われるので、うんちくはほどほどにして、目と舌でおいしいビールを味わうことにしましょう。
ビールの他にも、ライティラン社では、ライティラの町の伝統的な飲みものであるレモネードなども製造しています。
ビールからソフトドリンクまで、スーパーマーケットやコンビニエンスストア、ガソリンスタンドでも販売される、フィンランドの国民的飲料メーカーなのです。
萩原 健太郎
萩原 健太郎
http://www.flighttodenmark.com
ジャーナリスト。日本文藝家協会会員。1972年生まれ。大阪府出身。関西学院大学卒業。株式会社アクタス勤務、デンマーク留学などを経て2007年独立。デザイン、インテリア、北欧、手仕事などのジャンルの執筆および講演、百貨店などの企画のプロデュースを中心に活動中。著書に『北欧の絶景を旅する アイスランド』『フィンランドを知るためのキーワード A to Z』(ネコ・パブリッシング)、『北欧とコーヒー』(青幻舎)、『にっぽんの美しい民藝』『北欧の日用品』(エクスナレッジ)、『北欧デザインの巨人たち あしあとをたどって。』(ビー・エヌ・エヌ新社)、『ストーリーのある50の名作椅子案内』『ストーリーのある50の名作照明案内』(スペースシャワーネットワーク)などがある。
店長カトーより
私はホップウォーターの大ファンです。アルコールを飲めない人向けに作られた、いわばノンアルコールビールのような立ち位置のドリンクらしいのですが、苦くも甘くもなくほどよく、華やかなホップのアロマとさわやかなのど越しがとても良いのです。お風呂にゆっくりつかって汗をかきながらホップウォーターをごくごく飲んで喉をうるおすのが最近のお気に入りです。