萩原健太郎のDESIGN FROM SCANDINAVIA 第11回

北欧に造詣の深い、ジャーナリストの萩原健太郎さんをお招きして、北欧デザインやライフスタイルについてうかがいます。毎月1回、第4金曜日の更新です。


第11回

クリスマスイブの迎えかた


僕は、2004年から2005年にかけてデンマークに暮らしていました。
そのときのことを思い出しながら、クリスマスイブの迎えかたについて書いてみたいと思います。

 

10月最終週の日曜日、デンマークは夏時間から冬時間へと移行します。
夕方4時を過ぎる頃には夕闇が訪れるのですが、この季節を経験してはじめて、夏のあいだ、たとえ短い時間であっても、デンマーク人が光を求めて屋外に出る理由がわかりました。
太陽が顔を出す時間が少なくなってくるこれからの時期、彼らは何を楽しみにして過ごすのでしょうか?
そう、1年の最大のイベント、クリスマスを待つのです。


 

夏時間の最終日の森の散歩道。落ち葉を踏みしめる音が心地いい。遠くには、乗馬を練習している姿が見えます


日ごとに暗い時間が長くなっていく11月は、デンマークの人々にとってはかなり気が滅入る時期らしいです。

それでも下旬になれば、クリスマスのイベントが開催されるようになり、気分が盛り上がってきます。

僕が暮らしていたヘルシンオアという街にも、早めのサンタクロースがやってきました。

日本のクリスマスは、どちらかといえば、若い人たちのものというイメージがありますが、こちらでは赤ちゃんからおじいさん、おばあさんまで、みんなで楽しみます。


 

駅前の広場。少し頼りなさそうな観覧車。案の定、電気が消えたり、止まったり。その様子を見ても悲鳴を上げるわけでもなく、ただ笑っている人たち。頻繁にあることなのか、のんびりしている国民性なのか……。僕だけがヒヤヒヤしていました


 

サンタクロースのようなおじさんが、木製の人形を売っている屋台


 

手づくり感にあふれる街のデコレーション


12月に入り、スウェーデンのマルメという街に遊びに行きました。

ここでは、街角の小さな広場に登場したスケートリンクが印象に残りました。


 

よちよち歩きの子どもから、童心に帰ったような笑顔を見せる大人まで、あたたかな光に包まれながらスケートを楽しんでいました


デンマークの首都・コペンハーゲンでは、9月にいったん閉園した「チボリ公園」がクリスマスの装いで再び開園していました。

ウォルト・ディズニーも参考にしたといわれるチボリ公園は、決して大きな敷地ではありませんが、その狭さを感じさせない、家族連れからカップルにまで愛されている遊園地です。


 

コペンハーゲンのストリートにあらわれた聖歌隊。サンタのような赤い帽子がかわいい


 

デンマークのクリスマスツリーには、ハートのモチーフがよく見られます。代表的なのが、「ユールヤータ」(クリスマスのハートの意味)。デンマークの国旗の色である、赤と白の紙を交互に組み合わせたもので、保育園や小学校などでつくりかたを教わります


 

夕暮れどきのチボリ公園。まさにクリスマスムード一色です


 

ライトアップされた木々と建物の様子。空の澄んだ青色の美しさが際立ちます


 

チボリ公園のエントランス


そして、誰もが楽しみにしていたクリスマスイブの当日を迎えます。

しかし、これまでのにぎわいはどこに行ったのか、不思議なことに街は静かです。

日本だと一番盛り上がる日なのですが……。

 

実は、この日は、家族や恋人など、大切な人と家でゆっくりと過ごす人たちが多いそうなのです。

キャンドルの灯りのもと、ホットワインの「グリュッグ」を片手に、豚肉をカリカリに焼いた「フレスケスタイ」などを味わいながら、ささやかな幸せを噛み締めるのです。

 

ノルウェーを舞台にした『クリスマスのその夜に』という映画があります。

人生でつまづいたり、不器用にしか生きられなかったり、それぞれがそれぞれの愛する人を求めてクリスマスイブを迎える、あたたかいけれども少しせつない物語が描かれています。

よかったら観てみてください。

 

それではみなさん、素敵なクリスマスイブを…。

萩原 健太郎


萩原 健太郎

http://www.flighttodenmark.com
ジャーナリスト。日本文藝家協会会員。1972年生まれ。大阪府出身。関西学院大学卒業。株式会社アクタス勤務、デンマーク留学などを経て2007年独立。デザイン、インテリア、北欧、手仕事などのジャンルの執筆および講演、百貨店などの企画のプロデュースを中心に活動中。著書に『北欧の絶景を旅する アイスランド』『フィンランドを知るためのキーワード A to Z』(ネコ・パブリッシング)、『北欧とコーヒー』(青幻舎)、『にっぽんの美しい民藝』『北欧の日用品』(エクスナレッジ)、『北欧デザインの巨人たち あしあとをたどって。』(ビー・エヌ・エヌ新社)、『ストーリーのある50の名作椅子案内』『ストーリーのある50の名作照明案内』(スペースシャワーネットワーク)などがある。


店長カトーより

 

チボリのゲートを見るといつでもわくわくしますが、クリスマスはひとしおですね!なんとも恋しい…今すぐ行きたくてたまりません。いちばん冬が深まる冬至が明け、少しずつ日が長くなってゆく喜びに満ちた中で迎えるクリスマスの楽しさは、ここ日本で感じるものとはまたひと味違いますね。その違いをおもしろく味わいながら、よい夜をお過ごしください。